量子多体系の理論
固体中の電子集団、液体ヘリウム、極低温の中性原子気体、量子コンピュータのように、量子力学に従う構成要素が多数集まり互いに力を及ぼし合う系を量子多体系といいます。量子多体系で起こる物理現象を解明することは物質の性質を理解する上でとても重要です。当研究室ではこのような量子多体系の物理を理論的な立場から研究しています。興味を持っている具体的な現象として、超流動、超伝導、超固体、近藤効果、量子磁性、量子相転移、非平衡ダイナミクス、多体局在などが挙げられます。
量子多体系の理論的な解析が困難である大きな理由の一つは、一般に数値計算のコストが系の大きさに対して指数関数的に増大してしまうことです。そのため、多くの場合において現実的な実験を説明する理論解析を実行するためには、この指数関数的な増大を回避する効率的な計算手法が必要です。当研究室では、テンソルネットワーク法、クラスター平均場理論、切断ウィグナー近似法などの数値計算手法を利用・拡張し、量子多体系の物理を解析しています。
近年、量子多体系を研究するための新たな手段としてアナログ量子シミュレーションが注目を集めています。これは固体中の電子集団などの物質中で起こる複雑な物理現象を、冷却気体などの制御性の高い人工的な量子系を用いてシミュレーションするという画期的な方法です。当研究室では、いくつかの実験グループによる量子シミュレータ開発を理論面から強力にサポートしています。
現在進行中のプロジェクト
課題名 | 制度名 | 支援元 | 期間 | 直接経費額(千円) | 役割 |
テンソルネットワーク法と量子シミュレータで切り拓く新奇量子多体現象 | 創発的研究支援事業 | 科学技術振興機構 | 2021〜2027年度 | 49,800 | 研究代表者 |
アト秒ナノメートル領域の時空間光制御に基づく冷却原子量子シミュレータの開発と量子計算への応用 | 光・量子飛躍フラッグシッププログラム 基礎基盤研究 | 文部科学省 | 2018〜2027年度 | 28,891 | 共同研究者(研究代表者:分子科学研究所 教授 大森賢治) |
過去のプロジェクト
課題名 | 制度名 | 支援元 | 期間 | 直接経費額(千円) | 役割 |
強相関冷却原子気体を用いた開放量子多体系の実験的研究 | 科学研究費 基盤研究(B) | 日本学術振興会 | 2021〜2023年度 | 1,400 | 研究分担者(研究代表者:京都大学 准教授 高須洋介 ) |
光格子中超低温原子気体の軌道及びスピン自由度を駆使した新量子物性の開拓 | 科学研究費 基盤研究(S) | 日本学術振興会 | 2018〜2022年度 | 15,000 | 研究分担者 (研究代表者:京都大学 教授 高橋義朗) |
冷却原子の高度制御に基づく革新的光格子量子シミュレーター開発 | CREST | 科学技術振興機構 | 2016〜2021年度 | 26,200 | 主たる共同研究者 (研究代表者:京都大学 高橋義朗 教授) |
ホログラフィー原理と光格子中の冷却気体の協奏による量子重力実現の提案 | 科学研究費 基盤研究(C) | 日本学術振興会 | 2018〜2020年度 | 3,300 | 研究代表者 |
イッテルビウム量子気体の究極的操作・観測が拓く量子凝縮相研究の新展開 | 科学研究費 基盤研究(S) | 日本学術振興会 | 2013〜2017年度 | 4,000 | 研究分担者 (研究代表者:京都大学 教授 高橋 義朗) |
乱れのある一次元量子流体の量子相転移と非平衡動力学 | 科学研究費 若手研究(B) | 日本学術振興会 | 2013〜2015年度 | 2,900 | 研究代表者 |
光格子中における強相関ボース気体の動力学 | 基礎科学特別研究員 研究費 | 理化学研究所 | 2010〜2012年度 | 3,000 | 研究代表者 |
冷却気体で実現する量子系のフェルミ・パスタ・ウラムの再帰現象 | 科学研究費 研究活動スタート支援 | 日本学術振興会 | 2010年度 | 1,250 | 研究代表者 |
光格子中のボース気体における超流動流の崩壊 | 科学研究費 特別研究員奨励費 | 日本学術振興会 | 2008〜2009年度 | 1,600 | 研究代表者 |
ボース・アインシュタイン凝縮系における自発的対称性の破れと素励起 | 科学研究費 特別研究員奨励費 | 日本学術振興会 | 2005〜2007年度 | 2,700 | 研究代表者 |